酒米 「亀の尾」

酒米 「亀の尾」とは

酒米「亀の尾」は、その漢字の通り「かめのお」と読みます。発祥の地は、鯉川酒造のある現・山形県庄内町です。

鯉川酒造では、地元米である「亀の尾」から、多くの酒を醸しています。

かつては食べても酒にしても美味しいお米として愛されながらも、時流のなかで栽培が途絶え、ついには幻の米とまで言われた「亀の尾」。このページでは、「亀の尾」の発祥から復活させるまでの物語と、酒米としての特色をお伝えします。

「亀の尾」の歴史

「亀の尾」はこうして生まれた

「亀の尾」は、明治時代に現・山形県庄内町において阿部亀治(あべかめじ)という人物により育成された、イネの品種です。

明治維新以来、庄内藩の農政の影響もあり、山形県庄内地方では、他地域で類を見ないほど米育成への研究が熱心に行われていました。

そのような時代背景のなかで、農家であった阿部亀治は冷害の年に、神社の隣の田で寒さに耐え3本だけ実っている穂を発見しました。

亀治は穂を田の所有者から譲り受け、それらを種子として、根気強く栽培・育成に挑みました。そして数年かけて、この育成と収量の安定に成功させました。

そのようにして見いだされ、育まれたイネの品種が「亀の尾」です。品種名は、阿部亀治の名にちなんで付けられました。

「西の雄町」「東の亀の尾」

当時「亀の尾」は、強風によく耐え、冷害や病気に強く収量も上がるイネの品種として、どんどん評判が広まりました。

そして大正時代には、東北地方・北陸地方を中心に広く栽培されていきました。

「亀の尾」はこのようにして、かつて日本でも代表的なイネ品種のひとつとなったのです。一時期には、「西の雄町」「東の亀の尾」と呼ばれるほどでした。当時、飯米と酒米のどちらとしても美味しいと愛されていたお米です。

幻の米と言われるようになるまで

しかしながら「亀の尾」は、現代に近づくにつれ、「害虫に弱い」「化学肥料で育てると米がもろくなる」といった性質が現代農法にそぐわず、少しずつ、その子孫品種に栽培面積を取って代わられました。

実際、1970年代には、コシヒカリなどの品種にすっかり取って代わられています。

ついにはすっかり栽培されることもなくなり、1980年代以降の復活以前には、「亀の尾」は「幻の品種」とまで言われるようになりました。

復活の道へ

そして1980年代以降、新潟県の久須美酒造さんや山形県庄内町にある本酒蔵である鯉川酒造により、「亀の尾」は復活への道を歩みます。

本酒蔵の現代表取締役である佐藤一良とその父である先代も、「亀の尾」の復活を強く願っていました。

1980年には、現代表取締役である佐藤一良は、阿部亀治の遺言通りに保管を続けていた阿部家より、「亀の尾」の種もみを譲り受け、復活栽培を行いました。

翌年には、弊社で1本目の「亀の尾」による日本酒を作ることができました。

このようにして、強い思いから復活させた「亀の尾」です。

「いいお米といいお酒を、一生懸命造りたい」。その思いで、本酒蔵では現在でも「亀の尾」を酒米として使うことと同時に、このイネ品種を保護することや広めることに心を注いでいます。

「亀の尾」に関するお問い合わせがあればできる限りのご対応をしていますし、日本酒にする際の製造技術の質問にもお答えしています。

「亀の尾」の味

御飯としても美味しい

「亀の尾」は、御飯として食べられることは少なくなりましたが、現在でも自然食や自然農法を愛する方々には、美味しいお米として親しまれています。

御飯として炊くと、粒がしっかりしたお米であり、あっさりとした味わいです。淡白ではありますが、やわらかく優しい甘みが感じられます。

酒米としては、高い技術が必要とされる品種

酒米としての「亀の尾」は、品質の高い酒を造るには技術が必要とされる品種、と言われます。

本酒蔵では米の栽培からこだわり、少しでも大粒の米を栽培していただき、精米してからも米の水分量に配慮しながら酒を醸しています。

日本酒を造りにくい米だからこそ、よりよい酒を醸せるよう、日々研鑽を積んでおります。

「亀の尾」で醸した酒は、さまざまな印象に仕上げることができますが、仕上がった酒に共通する点は、滑らかな口当たりと深みとコクです。

「亀の尾」は日本酒にするためには技術のいる米ですが、酒蔵の技術と相応しい酵母の働きによって、独特の深い香りや味わいを出すことができます。

本酒蔵では辛口純米酒に仕上げている

本酒蔵では特に、亀の尾」の良さと力を最大限に引き出すために、ほとんどの酒を、キレのある辛口の全量純米酒に仕上げています。

「亀の尾」から造った辛口純米酒は、美味しいお料理を楽しむ場面で燗酒にしてお召し上がりいただくと、お料理の味をさらに引き立ててくれます。食中酒としては最適です。

鯉川酒造と「亀の尾」

米の力を引き出す酒造りと品種の保護

本酒蔵では、山形県産で地元の「亀の尾」を使っています。また、自ら栽培もしています。

酒造りの工程では、「亀の尾」の良さを引き出す「地元の水」と「県産酵母」を用い、丁寧にひとつひとつの酒を醸しています。

コメ品種としての「亀の尾」の保護にも力を入れながら、厳選された地元の原材料・300年続く酒蔵に蓄積されたノウハウ・地元の杜氏と蔵人の持つ技術で、「亀の尾」の美味しさを活かした酒造りを続けています。

辛口純米酒で「亀の尾」の美味しさを感じてほしい

本酒蔵で「亀の尾」から醸した酒は、料理の美味しさを引き立てる上品な控えめさを持ちながらも、古来から伝わるコメ品種ならではの、純粋な力強さをあわせ持っています。

「『亀の尾』で造るからこそ、辛口の全量純米酒としてよりいっそうの誇りを持ってお薦めできる」。そんな商品を、本酒蔵ではいくつも育ててきています。

ぜひこの酒米の、いつまでも飲み飽きない、力強い味わいをお楽しみください。


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